働き方。
それはつまり、その人の人生の「生き方」に他なりません。
なぜなら、人生の大半の時間を「労働」に費やすことになるからです。
ここでは、フランスに1年間留学した経験を持つサイト管理人による、日本人とフランス人の労働に対する価値観の違いを解説しながら、「働くとは何か?」についてサイト管理人なりの考えをまとめています。
この記事の目次
フランス人の働き方を決定づける「大統領」の存在とは?
2012年、フランスの新大統領が決まった瞬間、僕はフランスに留学していました。
僕がホームステイをしていたホストファミリーと、その友人同士で涙を流しながら抱き合って喜んでいた姿が、今でも目を閉じたまぶたの裏にハッキリと思い浮かびます。
日本では考えられませんが、フランス国民にとって国のトップが決まる大統領選挙とは、”超”がつくほどの一大イベントなのです。
それもそのはず、大統領の方針次第で、自分の生活や仕事の働き方がガラッと変わってしまうのだから。
偶然、そんな重大な時期にフランスに滞在できたことは、ある意味ラッキーなことであり、とても貴重な体験だったと思います。
フランス国民ではない一人の異国人として、彼らの「政治観」や「仕事観」を第三者的な立場でうかがい知ることができたのは、本当に幸運でした。
こうした生のフランス国民の声や振る舞いを通して、
- 「国」とは、一体何なのか?
- 「労働」とは、一体何なのか?
- 「働き方」とは、一体何なのか?
そんなことを嫌でも考えさせられたのを、今でもよく覚えています。
たぶん一度でも海外で暮らしたことがある人なら、この気持ちはよくわかると思います。
人は何か比べるものがあって、初めてその本来の「価値」に気づくものです。
良くも悪くも、”外”に出て初めて日本とはどういう国なのか。
また、日本人とはどういう価値観を持つ人種なのか、改めて認識することができました。
それでは早速、フランスと日本の働き方の違いについてみていきましょう。
まずは、フランス人の労働に対する価値観についてざっくりまとめてみました。
フランス人の働き方に対する価値観と個人的な憧れ
いきなりですが、あなたに一つ質問をさせてください。
フランス人の働き方に対するあなたのイメージはどんなものですか?
- フランス人は1日に3時間程度しか働かない。
- フランス人はバカンスのために働いている。
- 1ヶ月以上の長期休暇は当たり前。
- 1秒たりとも残業なんてしない。
などなど、、、
ちなみに、これは僕がフランスに滞在する前に抱いていたイメージです。笑
あなたも一つぐらいは、僕と同じイメージを持っていませんか?
1日3時間の労働時間というのは、少し言い過ぎかもしれませんが、いくつかは、あながち間違っていないと思います。
一つのエピソードとして、留学していた当時、僕が現地のフランス語の語学学校に通っていた時の話。
ある日の授業終わりに、フランス人の先生から突然、
明日から私、バカンスで3週間スペインのマジョルカ島に行ってくるから。
スペインの太陽が私を待ってるわ。
それじゃあ、あんた達、フランス語の勉強がんばってね〜。チャオチャオ〜
いかにもスペインの太陽は私たちフランス国民の恋人かのように、なんのためらいもなく言う姿は、厚かましさを通り越して、感動すら覚えたのを今でもよく覚えています。笑
まさに、開いた口がふさがらないとはこのことです。
たまに、「なぜ留学先にフランスを選んだのか?」と聞かれることがあります。
大きな理由の一つに、まさにこの日本人では想像もつかない「ぶっとんだ働き方」に興味を持ったからです。
- きっと、フランス人は人生を”超”満喫しているに違いない。
- 彼らは知っていて、日本人だけが知らない、何か「働き方の極意」みたいなものがあるのだろう。
- 人生を楽しむ術を知るフランス人の価値観にぜひあやかりたい!
こうした高鳴る期待とワクワク感に、一人密かに心を踊らせていたのです。
では、具体的にフランスと日本の労働環境はどう違うのでしょうか。
フランスと日本の労働環境の違いとは?
統計データとして、こんな結果が出ています。
法律上、フランスは週35時間と労働時間が決められていて、日本の週40時間と比べて5時間少ない。
フランスでは、1日7時間、週5日出勤とすれば、あとは残業に悩まされることなく、自由な時間を過ごすことができる。(※フランス社会のエリート層「カードル」は除く)
また、有給休暇は年30日ほど認められており、加えて日本のように取りづらい「空気」は無いに等しい。
さらに面白いことに、1時間当たりの生産性をみると、フランスは約25ドル、日本は18ドルなのだそうだ。
ちなみにアメリカは24ドルで、フランスという国が、いかに効率的な働き方をしているのかがデータでわかります。
こうしたデータを知ってか知らずか、ある日、フランス留学時にお世話になっていたホームステイ先のホストファミリーから、こんなことを聞かれたことがあります。
フランスも日本も先進国と言われているわね。
正直に言って、私たち(フランス人)はバカンスのために働いてるわ。
だから「バカンス」というのは、「働くこと」と同じぐらい人生の大きな目的なの。でも、日本人は何のためにそんなにたくさん働くの?
え?何のため?・・・お金のため?養う家族のため?地位?それとも名誉?
何だろう。。。
・
・
・
・
・
C'est la vie.(それが人生ってものさ)
苦し紛れにそう答えたのをよく覚えています。苦笑
フランス人は、仕事を最優先に考えることはほとんどありません。
『人生の一部として仕事があり、仕事=人生ではない』と考えているからです。
こうした価値観を多くの人が共有しているから、
「バカンスは、人としての当然の権利」という、暗黙の了解が国民の間でうまくかわされています。
こうしたデータや国民性を客観的に見る限り、
日本人は、ヘトヘトになるまで毎日働くわりには生産性がそれほど高くはなく、かつ、休暇は取りにくい雰囲気が蔓延しているので、「日本型労働環境」はあまり良い印象を受けません。
一方、フランス人は、ホドホドに働くわりには生産性が高く、かつ、休暇はすこぶる取りやすい環境なので、「フランス型労働環境」の方が素晴らしい、というような印象を受けます。
しかし、そんな単純な話でもありません。
フランスの短所=日本の長所
すべての国や地域には、その土地土地によって最適化された環境と、それぞれ独自に育まれてきた文化があります。
単純に数字や国民性だけを比較して、それをそのまま違う社会に当てはめても普通はうまくいきません。
ある面では「短所」に見えることが、視点を変えれば「長所」として働くこともあります。その逆もまた然りです。
つまり、短所と長所は常に表裏一体なのである。
例えば、フランスの会社はきっちり長い期間休みを取る代わりに、多くの人の休暇が重なる8月は、社会全体がほぼ動かなくなり、日常生活において不便を感じることが少なくありません。
また、カトリック教というお国柄、日曜日はほとんどのお店が閉まっています。
一方、日本のように24時間営業しているコンビニやファミレスは、常に高いレベルでお客さんの要求を満たしてくれていますよね。
こうした社会は、世界広しといえど日本ぐらいでしょう。
そして、フランスは日本以上に学歴社会でもあります。
どのレベルの学位を持っているかで、就職先はずいぶん変わってきます。
転職する際にもそれは大きく関係するため、新たに何か資格を取ったり、わざわざ大学院へ進学して1つ上の学位を取得する人も中にはいます。
日本のように学位と就職先の職種が全く異なることは稀で、基本、持っている学位に沿った企業に就職していきます。
例えば、「工学部」を卒業しているのに、「銀行」に就職するということはありません。
また、今までの職歴とともに新たな学歴を加えて、新しい会社と今より良い条件で契約するのがフランス流の転職法です。
そして、転職を繰り返し、契約ごとに給料を増やしていきます。
加えて、フランス(ヨーロッパ全般)は、若者の失業率の問題もあります。
15~24歳の失業率が、イタリアで40%、フランスで30%、ギリシャやスペインではなんと50%を超えています。
一方、日本は若者の失業率はおよそ6%。
就職氷河期なんて言葉も耳にしますが、実はヨーロッパと比べてみると、日本では職に就いている若者の割合がかなり高いのが特徴です。
他にも、欧米の人たちは残業する人を「仕事ができない人」と捉える傾向がありますが、長時間働く人を「責任感のある働き者」として賞賛するのが日本人です。
この「働き者」を長所として捉えれば、勤勉かつ、きっちり仕事をこなす信頼できる人、と解釈することもできます。
こうして戦後日本は、高度経済成長の奇跡の復活を遂げたことを考えると、昭和の激動を生き抜いてこられた先人たちの「働き方」のお陰で今の日本があると言っても過言ではありません。
「フランス型短時間労働」vs「日本型長時間労働」
それぞれの国の「働き方」を客観的に見てみると、ある一つの結論にたどり着きます。
それは、
どちらの働き方が良くて、どちらが悪いという明確な区別はない。
ということです。
どちらも長所があれば、短所もあります。
つまり、「働き方」というのは、その人個人の価値観が優先されるべきものだということである。
今まで培ってきたその国ごとの歴史背景や文化が違えば、そこで暮らす人々の考え方や価値観が変わるのは当然のことです。
そもそもの話。
労働によって生まれた「生産物の対価」としてお金をいただくという価値観を持っていれば、長時間労働は悪であるとか、短時間労働が素晴らしいなどと議論するのは、まったくもって無意味ではないでしょうか。
例えば、一日の仕事量が「10」あるとして3時間で終わればそれで良いわけで、8時間やっても「7」しかできなければ残業してでも終わらせなければいけません。
結局のところ、「私は一日◯◯時間働いている」という、ものさしでしか自分の働き方を評価できない人は、いつまで経っても”誰か”が管理する枠の中でしか生きていけないということです。
言い換えれば、かけがえのない自分の貴重な人生の時間を、誰かに切り売りしながら生きるという選択肢しかないということです。
そうは言っても、、、
そんなに簡単じゃないよ、うちの会社は…
ほら、周りの目とかあるし、自分だけ残業せずにそそくさと帰るのって気まずいでしょ?
そこらへん、空気読もうよ〜!
そんな声が今にも画面越しから聞こえてきそうですね。笑
確かに。わかります、その気持ち。
現に、新聞を開けば連日のように誰かが過労死で亡くなったとか、長時間労働を課すブラック企業が後を絶たないといったニュースが取り上げられていますしね。
おそらく、テレビや新聞といったメディアで報道されているニュースなんて氷山の一角でしょう。
報道されていないだけで実際には、その何倍も、何十倍も事件は隠れているんだろうなと、簡単に想像できます。
しかし、ここで一つ考えて欲しいことがあります。
そもそも、その仕事を選んだのは誰か?
ということです。
誰かに頭に銃を突きつけられて、
「お前はこの仕事をしろ!さもないと、この引き金を引くぞ!」と、脅されて今の仕事を選んだのでしょうか。
あるいは、
「この仕事をしなければ、お前の親を拉致するぞ!」と、脅迫されて今の仕事に就いたのでしょうか。
どこかの独裁国家ならまだしも、少なくともここ日本においては、そんなことは絶対にありえませんよね。
だから、今やってる仕事に対して不平不満を言う人を見ると、僕は内心こう思ってしまいます。
(あぁ…ここにも一人、見た目は大人でも、思考が幼稚な駄々っ子ちゃんがいるわ…)
それはまるで、テディベアの人形が欲しいと買い与えた途端、やっぱりリカちゃん人形が欲しいと泣き叫ぶ、聞き分けのない子供のようです。
今の仕事を選んだのは、他でもないあなた自身です。
月給20万円で、週休2日のカレンダー通りの勤務体系を選んだのは、他でもない「あなた自身」だということ。
うちの会社、なかなか給料上がらないんだよなぁ・・・と不平不満が出るような会社の契約書にハンコを押したのは、他でもない「あなた自身」だということ。
残業時間が月100時間を超えるようなブラック企業を選んだのは、他でもない「あなた自身」だということ。
別にあなたじゃなくてもいい。他にも代わりはたくさんいる。そう会社から言われる立場に身を置こうと決めたのは、他でもない「あなた自身」だということ。
より大きな共同体の声を聴け!
それでも、どんな理由があろうとも、やっぱり死んではいけないですよ。
どれだけ苦しくても、生きなければいけない。
時々、どうして過労自殺や人間関係のもつれで亡くなってしまう人が後をたたないのか、考えることがあります。
学校でも、職場でも、どんな環境でも起こりうる、いわゆる「自殺者問題」です。
ここで一つ、ある本の一説をご紹介します。
個人的に大好きな「嫌われる勇気」という本の一説に、対人関係で行き詰まったら「より大きな共同体の声を聴け」という原則を紹介しています。
こんな場面を想像してみてください。
例えば、あなたが職場の人間関係で悩んでいたとしましょう。
「もう無理、ここではやっていけない…」それぐらい追い詰められていたとします。
でも、「外の世界の大きさ」を知っていれば、今自分がいる職場環境での苦しみや悲しみが「コップの中の嵐」であると気づくはずです。
コップ(職場)の外に一歩踏み出してしまえば、吹き荒れていた嵐もそよ風に変わるということです。
働き方のスタイルを決めるのはあなた次第
これだけは断言して言えることが一つあります。
外の世界には、僕たちが知らない世界がまだまだたくさんあって、”ぶっとんだ仕事”をしている人が世の中には、ごまんといるということです。
要は、その中から自分の価値観に合った働き方を好きに選択すればいいわけです。
うれしいことに、その権利を生まれながらにしてすべての日本人は持っています。
フランス人みたいにバカンスのために命を燃やす「短時間労働型」がいいなら、そうした働き方を選ぶことだってできます。
お金をがっつり短期間で貯めたいなら、観光地のホテルや旅館に住み込みながら働く方法だってあります。
大好きな絵を極めるために、パートタイムでアルバイトをしながら芸術の世界に没頭したっていい。
子育てをしながら家で仕事がしたいのなら、在宅でできる仕事も世の中にはたくさんあります。
昼は派遣社員、夜は蝶よ花よのお水の世界でがんばるのもいい。
もちろん、正社員という働き方が自分に合っていると思うならそうすればいいし、なんならいっそのこと、起業したっていいわけです。
世の中には、ハローワークのような求人情報に掲載されていないような仕事が、それこそ何十、何百とあったりします。
正社員や公務員は安定してるから上だとか、派遣社員は給料が低いから下だとか、アルバイトはフリーターみたいなものだからダメだ、みたいな上下関係など本来であれば一切ないはずです。
多少の責任範囲が違うだけで、ただ単純に、その人が選択した働き方のスタイルが違うだけです。
それ以上でも、それ以下でもありません。
これからの時代求められる人物像とは?
結局のところ、最後は、ひとり一人が「これだ!」と信じる「働き方」に対する価値観を確立しているか、否かにかかっています。
企業の正社員に向いていないなと思うのであれば、さっさと辞めて別の新しい仕事に切り替えて、自分らしい働き方を探そうと行動できるか、否か。
他人の目とか、評価を気にする前に、まず第一に自分が幸せになることを考えて、社会に貢献できる働き方を見つけようと努力するか、否か。
健康な身体と精神がなければ、元も子もないですからね。
「人生一手の違い」とはよく言ったもので、こうしたちょっとした見聞の差や見識の差で生きる態度が負の感情に振れてしまうのは、本当にもったいないことだと心の底から思います。
フランス人のように人生を楽観的に楽しむためのヒントとして、
これから、どれだけ自分の価値観に合った働き方の選択肢の幅を広げられるか。
そして、どれだけいざとなったときのために切れる働き方の”切り札”を持っているか。
それが何よりも大事なことだと思います。
「大丈夫!働き方はそれ一つだけじゃないよ。こんな選択肢だって、あんな選択肢だってあるんだよ!」と導ける人が、これからの時代、ますます求められていきそうですね。
これからの人生、最高の働き方を求めて。
以下の5つの「W」を死ぬまで意識しよう。
- 「What」何をするか?・・・義務ではなく本当に自分が好きなことをやろう!しかも、社会に役立つことを。
- 「Where」どこでするか?・・・「職場はどこなの?」と聞かれれば、「世界中の最高の場所」と答えられるようにいつでも準備しておこう。
- 「Who」だれとするか?・・・一緒に働きたいと思える素晴らしい人たちだけと、何かを成し遂げよう。
- 「When」いつするか?・・・休むのも、働くのも、自分の時間をコントロールできる主人は他の誰でもない、この私である。
「Why」なぜするか?・・・自分ならではの信念、価値観、社会貢献の方法をよく考え、結晶化しよう。
まとめ
働き方のスタイルそのものに、良いも悪いも上も下もない。
自分自身の価値観が投影された「働き方」を確立し、実践することこそ最も大事なことである。
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